幻氷(げんぴょう)は、オホーツク海の「海明け」を告げる春の風物詩です。
海上に残った流氷が、光の屈折によって通常と違った見え方をする蜃気楼現象です。
このページでは、幻氷と、幻氷と誤解されやすいほかの蜃気楼現象について、それぞれ解説します。
上位蜃気楼と下位蜃気楼の違いなど、蜃気楼の基本についてはこちら↓でご確認ください。
幻氷
- 流氷が去っていく春先を中心に発生
- 「白いビル」や「厚い流氷帯」、「二重の流氷帯」、「氷の壁」、「白い大陸」のように見え(見え方は多様)、大きく迫力がある
- 帯状に見える像の上端が真っすぐに揃っている場合が多い
- 南(陸上)から暖かい風が吹くことで起きると考えられている
- しばらく見ていると、虚像の形が変化する場合が多い
- 「おばけ氷」とも呼ばれる
幻氷と間違われやすい現象
空飛ぶ流氷(流氷の下位蜃気楼)
- 春先以外にも発生し、 海面が見えていれば頻繁に見られる
- 流氷が「宙に浮いているよう」にみえる (=下位蜃気楼=浮島現象)
- 像の上端がでこぼこしている
- しばらく見ていても、虚像の形が変化しない
- 海上を冷たい風が吹くことで起きる
- 流氷が近くにある場合、より大きく「浮かんで」見えることがある
真冬の流氷の上位蜃気楼
- 流氷が沖合まで密に接岸した厳冬期に発生(朝が多い)
- 流氷原と空のさかい目に、白い帯状やバーコード状の縦縞のように見える(見え方は多様)
- 流氷原が放射冷却で強く冷え込むことで起きると考えられる
どうやって見分けるの?
虚像の見え方や、気象条件から総合的に判断します。
しかし、冬のオホーツク海では、上位蜃気楼と下位蜃気楼の両方が同時に見えることも多く、判断が難しい場合もあります。
また、発生条件や特徴が完全に解明されているわけではなく、今後、これらの分類が変わっていく可能性もあります。
※本ページの文章は2015年、筆者が斜里町立知床博物館に在籍時、館のホームページで公開した内容について一部写真・文章を見直したものです。文責:佐藤トモ子