- 蜃気楼を科学的な面から説明すると、気象現象である「大気光学現象( 大気光象 )」のひとつに位置付けられます。
- さらに蜃気楼を分類すると「上位(じょうい)蜃気楼」と「下位(かい)蜃気楼」の2つに大きく分けられます。
上位蜃気楼とは?
上位蜃気楼は、実際の景色(実像)の上に複数段の「虚像」が現れるなどし、刻々と見え方が変化するため、いかにも「まぼろし」というのに相応しい見え方をします。
よく、「外国の景色が見える」「自分の後方の景色が映って見える」などと言われますが、そういうわけではなく、実際に存在する風景が形を変えて不思議な形に見えるのです。
- 特別な場所で、限られた時間しか見られないとされる(*)
- 有名な富山県の蜃気楼は上位蜃気楼
- 下層(地上付近)に冷たい空気、その上に暖かい空気、という「上暖下冷」の温度構造で発生
- 光が上方に屈折することで起きる蜃気楼
*ただし近年、知識の普及によるためか、全国各地での発見や、毎年見られる観察地が増えてきています
一般的な上位蜃気楼の場合、虚像の見え方に影響する温度変化層は、地上から十数~数十メートルまでの間に存在し、厚さは数m程度のこともあると言われています。
また、上位蜃気楼の場合、水平線の向こうにあり通常は見えない物体が見えることもありますが、それでも何百キロも離れた外国などの景色が見えるわけではありません。
下位蜃気楼とは?
下位蜃気楼は、 宙に浮いたように見えることから「浮島現象」とも呼ばれ、 全国のいろいろな場所で、一年を通じて観察できます。
地上で起きる場合は「逃げ水」と言われます。
- 上位蜃気楼とは温度構造が逆の「上冷下暖」の場合に起こる
- 虚像が実像の下に1段のみ現れる
- 見え方の時間変化が少ないのが特徴です。
上位蜃気楼・下位蜃気楼の判断はむずかしい?
上位蜃気楼と下位蜃気楼の判断は難しい、と良く言われます。
実際に何度か観察すると、見分けられるようになりますが、はじめは確かに難しいかもしれません。
時間や日にちを変えて、普段の景色(実景)を見に行ったり撮影したりして、比較してみましょう。
普段の景色が確認できない場合でも、実際の景色がどうなっているかを考えれば、虚像がどのように出ているのか、推測できる場合があります。
また、上位蜃気楼と下位蜃気楼が同時に見えたり、複合的な見え方をする場合もあることがわかってきています。
現在は虚像の見え方と温度条件によって、上位蜃気楼と下位蜃気楼に分類していますが、 専門家でも判断が難しい場合もあります。
今後、さらに研究が進んで、分類が変わっていく可能性もあります。
四角い太陽や変形太陽は上位蜃気楼?
水平線上の太陽が四角などの不思議な形に見える場合、上位蜃気楼として説明される場合があります。
たしかに、上位蜃気楼の仕組みに近いのですが、空気の温度構造が一般的な上位蜃気楼とは違っている場合があると考えています。
対岸の景色や流氷などの変化を見せる温度変化層が地上から数十メートルという低い場所にあるのに対し、太陽の場合は、かなり上空(千メートルのオーダー)が原因となる可能性があるためです。
なお、変形太陽の中でも「だるま太陽」「足つき太陽」「オメガ(Ω)サン」と言われる見え方については、下位蜃気楼の原理で説明できます。
流氷の蜃気楼について
流氷に関係した蜃気楼(幻氷を含む)については、こちら↓をご覧ください。